衆議院議員丹羽雄哉氏講演会
2008/06/2
6月2日(月)、「衆議院議員丹羽雄哉・講演会」が、東京・紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂で、大勢の方々のご参加を頂き開催されました。
丹羽代議士の講演に先立ち、(株)日本総合研究所 高橋進 副理事長を講師にお招きし、「日本経済の展望と課題」というテーマで、わが国の経済を取り巻く環境や現状、ポスト・サブプライムの問題、今後の政策課題などについてご講演を頂きました。
続く、丹羽代議士の講演では、「社会保障の現状と展望」と題し、4月に新たにスタートした「長寿(後期高齢者)医療制度」の説明と、今後の修正課題などを中心に、年金、介護など、かつて経験したことのない少子高齢化時代のわが国の社会保障のあり方についてお話をさせて頂きました。
>>以下、講演内容
2008年6月2日の講演会
社会保障の現状と展望
本日の演題は、「社会保障の現状と展望」ですが、私は、わが国の社会保障について論ずる時、まず、“かつてない少子高齢化社会に突入している”という認識に立って考えてなくてはならない問題だと思っております。
国会は衆参のねじれ現象の中で、野党各党は選挙を意識し、全ての問題を政争の具に利用しようとしており、大所高所から国家を、政治を論ずるということが難しいのが現状であります。しかし、この未曾有の少子高齢化社会であるという時代認識を避けて、社会保障の在り方を論じても、無意味であるばかりか、誤った判断をすることになりかねないということを、最初に申し上げたい。
今、お年寄りの皆さんの不安を呼び、ご心配をおかけしている、新しい高齢者医療制度も、少子高齢化により、支える側が少なくなり、支えられる側が多くなってきたという、日本の人口構造の変化を大前提として導入したものなのです。
わが国では急速な高齢化によって、現在、65歳以上のお年寄り1人を3人の現役世代で支えていますが、2025年には、1.9人で支えなければならなくなる状況が確実にやってきます。高齢化に伴い、医療費は年々増加の一途を辿っております。33兆円の国民医療費の内、3分の1(11兆円)が75歳以上の高齢者の医療費ですが、これが20年後にはさらに増加し、医療費全体56兆円の半分の、25兆円になると見込まれています。
この4月から新たな制度が導入される前は、「老人保険制度」という形でしたが、この制度だと、高齢者医療医療の費用を若い方と高齢者の方がどのように分担するかについて明確なルールが無く、高齢者の医療費を若い方々に青天井で支えて頂いていました。老人医療費11兆円の内、半分以上を「老人保険拠出金」としてそれぞれの医療保険制度が拠出するお金で支えてきましたが、その結果、年齢構成の若い健康保険組合の中には全体の保険料の8割近くを老人保険制度に拠出していたところもありました。
この問題はかねてから国会でも論議され、一定のルールを決めようではないかということになって、平成12年には共産党を除いた与野党が賛成して、前の老人保険制度に変わる新たな高齢者医療制度を導入することで意見が一致していたのです。
私どもは、あまり若い方々の負担を多くするわけにはいかない。お年寄りの方でも、相応の所得がある方には、応分のご負担をしていただかなければ、わが国の保険制度そのものが成り立たない状態になってきているので、新しい高齢者医療制度を考えたわけです。
新高齢者医療制度は、公費で5割、現役世代から“連帯保障料”として4割のご負担を頂き、残りの1割をお年寄りの保険料で賄おうというものです。医療サービスの面でも今までとまったく変わりません。主治医制度が一人歩きし、急性の病気や重い病は診て貰えないのではないかなどといったご心配を持たれたようですが、医療サービスは基本的には従来と同じです。
「今まで、保険料なんか払ってなかったのに」というお年寄りの声を聞きますが、これまでは一緒に暮らす世帯主が払っていたこともあります。それを知らないお年寄りが「なぜ、今度は保険料を取られるのだ」とおっしゃいますが、これからの社会保障は、医療、保険、介護、みな、それぞれの負担となり、給付もサービスも「個人に属する」ので「家に属する」のではない、という大きな考えの中で見ていただきたい。
年金から天引きするのがいけないというのなら、息子さんがこれまで通り支払ってくれるなら、息子さんの口座から振替でという方法も考えられます。低所得の方の場合など、百円単位の保険料を一々、役場に届けたり、送金したりしないで済むし、忘れることもない。皆がそうすることによって制度を維持してほしい。
なぜ、75歳から別扱いにされているのかというご批判も頂くが、これは区切るのではなく、例えば基礎年金が65歳から支給される様に、これは一つの割り切りだと思っていただきたい。最初に、 “後期高齢者”医療制度などというデリカシーのない命名をしたので誤解された面もありますが、保険料の9割は、公費と若い世代で支えます、という手厚い制度なのです。最近はさすがに言われなくなりましたが、決して一部で言う「姥捨て山」などではありません。
わが国の社会保障は医療にしろ、介護にしろ、負担と給付の関係で成り立っています。現に社会保障給付費90兆円の内、3分の2が保険料によって賄われており、その保険料の半分は事業主が負担しています。もし、負担と給付の関係が断ち切られて、65歳になったら国が税金で全て面倒を見るということになれば、行き着くところ、年金が「第二の生活保護」に変質してしまうことに繋がると考えます。予算はどうなるのか、という問題もあります。
かつてローマ帝国の皇帝は、市民に無料でパンをふんだんに配給し、週末になると市民は決まってサーカスに興じたという話があります。そうやってバラまいた君主への市民の人気は高かったが、やがて市民は働かなくなり、ローマ帝国滅亡への道筋を辿ったと言われます。実は、日本でも似た様なことがつい最近までありました。「福祉元年」と言われた昭和48年に先立つ4年前、時の美濃部東京都知事は、老人医療の無料化に踏み切りました。これにほぼ全国の自治体が一斉に追従し、当時のマスコミは「福祉の美濃部」ともてはやしました。そして、この流れの中、4年後、国までが老人医療を無料化したのです。高齢者の医療費は倍増し、病院はやがてお年寄りの“サロン”と化したと言われました。お年寄りのサロンは必要です。それは別に作ればよいのです。この認識も、時間はかかっても国民の皆様にご理解いただきたい。
今やお年寄りの医療費が全医療費の3分の1を占めています。それが、どんどん増えていく。険しい少子高齢社会を、お年寄りも若い人たちも、お互いに協力して乗り切っていかなければなりません。 わが国の社会保障を長年に亘って質量ともに高い水準で維持してきた根本は「自立と連帯」の精神です。社会保障のみならず全ての分野において、まず「自立」があり、そして互いに助け合う「連帯と共助」があり、最後に登場するのが「公助」です。
過日、政府の社会保障国民会議が公表した公的年金制度に関する定量的シミュレーションでは、「全額税方式」を採用した場合、全ての支出に消費税が掛かるということなどから、サラリーマンにとっては「保険料の軽減額」を「消費税の負担の増加額」が上回ることになり、結果的に負担増になるということでした。年金については、現行の「社会保険方式」か、「税方式」か、賑やかな論争が繰り返されていますが、「負担」があって「給付」もあるという事が無くなれば、“第二の生活保護”となってしまうのです。
社会保障は国民の安心であり、社会の安定につながります。日本は、「自立」と「連帯」を基本に、税も投入して、今、医療、年金、介護という基本的な給付を誰もが受けられる形を作り上げてきました。このシステムのもとで、世界一の平均寿命と、世界一低い乳児死亡率を達成したわが国の社会保障のパフォーマンスは、世界的に高く評価されています。今後とも、わが国の社会保障制度に、自信と誇りを持って歩んでいきたいと思っています。どうぞ、よろしくご協力、ご支持をお願い申し上げます。










