今日、我が国では急速な少子高齢化が進行しており、これに伴い、社会保障の国庫負担は増加の一途をたどっております。2007年度政府予算では、社会保障関係費は21兆円を超え、国債費と地方交付税交付金等を除いた政策経費にあたる一般歳出の約45%にも達しました。仮に、社会保障関係費が今までのペースで増大していけば、将来、国の予算は社会保障と国債の償還・利払いだけになってしまいます。
政府・与党では、4年後の2011年を目指して、国・地方を合わせたプライマリーバランス黒字化という目標のもと、「歳出・歳入一体改革」を進めていますが、この改革においては、社会保障分野で、過去5年間と同様に、2007年度以降も5年間に、国庫ベースで1,1兆円の伸びを抑制するという改革努力を継続することとされています。
このため、本年度、来年度とも2200億円の削減が求められ、本年度は、雇用保険と生活保護の見直しによりこの要請を達成しました。しかし、来年度予算については、これにどのように対応するのか、これから本格化する予算編成上の大きな課題となっています。
薬価の改定と後発医薬品の利用促進で、約1000億円程度対応し、残りについては、若年の被用者保険間の財政調整による対応が検討されていますが、これは年末に向けて予断を許さない状況にあります。
社会保障制度については、2004年の年金改革、2005年の介護保険制度改革、2006年の医療制度改革と、その主要部分を占める年金・医療・介護分野で大きな改革を相次いで実施してきました。しかも、高齢者医療制度の導入や生活習慣病対策による医療費の適正化、基礎年金の国庫負担割合の引き上げなど改革の重要な中身はこれからの実施となっています。
これからの人口減少社会を乗り切るためのこれらの改革を着実に実施に移し、しっかりと軌道に乗せ、国民の「安心感」を醸成していくことが重要であると考えております。
そもそも社会保障とは、国民誰もが「人間の尊厳」を守れるような生活を保障するための仕組みであります。制度の効率化の努力は必要ですが、診療報酬や介護報酬の引下げが続き、医療や介護の現場が限界ぎりぎりのところまで来ていると認識しております。社会保障改革を進めるに当たっては、どうすれば国民に「安心感」を与えられるのか、ということを基本的な軸に据えて考えることが必要であります。
予算編成に向けてもう一つの大きな課題は、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引き上げをどのように実現するか、という点です。
先の年金改革では、今後、少子高齢化の進行が見込まれる中、将来の保険料水準の上限を厚生年金で18.3%に固定するとともに、いわゆるマクロ経済スライドを導入し、給付水準を自動的に調整できる仕組みとし、中長期的に経済とのバランスが取れた持続可能な制度に改革することができたわけですが、それも、基礎年金の国庫負担割合を2009年度以降2分の1に引き上げることが前提となっています。
国庫負担を2分の1に引き上げるには、2009年度であと約2.5兆円という巨額の財源確保が必要となります。このような額は、率直に申し上げて、歳出のカットだけでは到底捻出しきれるものではなく、税制改革も併せて考えていかなくてはなりません。道路か年金かの選択も迫られるかもしれません。
医療関係の先生方にとっては、年金制度についての話を聞かれる機会は少なく、ご関心をあまり持たれておられないかもしれませんが、例えば、来年度導入予定の高齢者医療制度の保険料は年金から天引きされることとなっているように、年金制度の安定は、医療や介護を含めた社会保障全体の要であります。
国民の理解を得る上で、消費税引き上げを社会保障のために使うということについて、いわば使途をはっきりと限定することなども今後の課題であり、この問題は、社会保障全体の安定と信頼感を確保する観点からも成し遂げなければなりません。
医療制度においても、国民の安心感を確保しながら、将来の給付の伸びをどのように抑えて制度の持続可能性を高めていくかが課題であります。しかしながら、医療は、年金のような現金給付と異なり、経済動向に連動して自動的に調整できるようなものではなく、政策の積み重ねによる医療費の適正化を進めていかなければなりません。
このため、昨年の医療制度改革では、
・生活習慣病対策や長期入院の是正など、中長期的な医療費適正化を進めるための医療費適正化計画の制度化
・後期高齢者医療制度(75歳以上)、前期高齢者(65歳〜74歳)の財政調整制度といった新たな高齢者医療制度の創設
・政管健保の公法人化や地域型健保組合の創設など都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合
・療養病床の再編
等、大きな改革を行ったところであります。
なお、新たな連立政権の発足に当たって、高齢者医療制度の在り方について検討することが合意され、私もメンバーの一人として参加して、与党のプロジェクトチームで検討が行われました。
その結果、
・被用者保険の被扶養者の保険料負担については、半年間凍結、さらに半年間は保険料の9割を軽減
・70〜74歳の医療費の自己負担1割から2割への引き上げについては1年間凍結
とすることとされ、これらの措置に要する財源については国が負担することとし、予算編成過程で適切に対処することとされました。概算要求基準(シーリング)の外枠で処理されると理解しております。
また、平成21年度以降の高齢者医療制度については、プロジェクトチームで引き続き検討することとされましたが、現在の仕組みでは、前期高齢者の医療に関して、70歳未満が3割負担、70歳以上が現在は1割負担で、新制度では2割負担と、前期高齢者の負担が「分断」されてしまいます。
私は、医療制度改革の際にも提案してきましたが、前期高齢者についても1〜2割の公費を投入して、65歳未満は3割負担、前期高齢者は2割負担、後期高齢者は1割負担というように、年齢によって3割、2割、1割と国民にも理解されやすい仕組みにすべきと考えています。
また、医療の高度化、専門化が進み、また、救急対応が増加する中で、脳卒中等に対する適切な医療を確保する上で、診療報酬の引き下げが難しい状況にあることは承知しています。
医療費の伸びの適正化が求められている中、急性期の入院医療から在宅医療・介護までの円滑な流れを作り、また、医療の必要度の低い方を受け入れている療養病床の介護施設への転換を進めながら、急性期の医療、また、救急医療や産科・小児医療など医療の確保が深刻になっている部分に配慮した診療報酬にしていくことが必要であるとも考えており、併せて、離島、僻地加算を増やすと共に、患者の負担を軽減するため、高額療養費限度額をその地域においては引き下げることも検討をしていかなければならないとも考えております。
我が国は欧米諸国と比べても在院日数が相当長く、急性期の病院での医療の後は、住み慣れた家庭や地域で療養できるよう、急性期入院医療から在宅医療・介護までの円滑な流れを作ることが重要であります。
医療機関の機能分化を進め、疾病ごとに、急性期から回復期、在宅医療といった、治療の流れに応じた医療機能を確立する。その上で、これらの医療機関が、地域の中で、治療計画に基づいて、患者を中心に連携し、最終的には自宅に帰す「地域連携パス」の体制を普及させていくことが課題であります。
そのためには、担当する診療所(在宅療養支援診療所)と、症状が急変したときの緊急入院対応など病院による後方支援体制の整備が必要であると考えております。
今日、とりわけ過疎地域においては、医師不足や病院勤務医の過重労働の問題を抱え、地域医療の確保が大きな問題となっている。さらには、インフォームド・コンセントや医療の安全を求める国民の声や、効率化の要請に応えていくことも求められていると認識しております。
医師確保の問題については、国においても、本年5月に政府・与党でとりまとめた「緊急医師確保対策」に基づき、国レベルの緊急臨時的医師派遣システムの構築をはじめ、病院勤務医の過重労働を解消するための勤務環境の整備や、中長期的な対策として医学部定員の暫定的な増加などの対策に取り組んでいるところであります。
医師派遣制度に関しては、来年4月から6か月間根室(根室市民病院)に産婦人科医を派遣することも、先月決定しました。医師は全国で約26万人と、年に4千人増えています。地域的な偏在は過疎地にとどまらず、地方都市の中核病院でも勤務医の確保が困難となっております。
私はかねてから、大都会の真ん中と過疎の地域で、同じ条件を求めていることに無理があるのではないかという問題意識を持ってきました。
もちろん医療の質の確保が前提になりますが、医療の質の向上と効率化に向けた取り組みの中で、規制緩和等にも取り組み、都会と比べて必ずしも医療資源が恵まれていない状況の中で、地方において頑張っている病院を応援し、地域の医療が確保されるようにしたいと思っております。また、緊急医師確保対策の中では、医師不足地域への医師派遣をより柔軟に行えるようにするための規制緩和も検討して参りました。今後、一定期間僻地や救急医療を経験することを、医師の診療所開設の前提とすることや、僻地、小児科、産科などに取り組んでいる医療法人の非課税措置を設けることなどにも努力して参ります。
(釧路市生涯学習センター まなぼっと 大ホール)