いま、日本の農業を問う
はじめに
農政のあり方が指摘されてから久しくなります。狭い耕地面積や担い手の高齢化などの中で、日本の食料自給率は依然として低い数字であり、上昇する傾向が示されていないのが現状です。
また、世界を見渡すと二国間での経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)が次々に締結されており、日本も例外ではありません。先日、農業輸出大国であるオーストラリアとのEPA交渉が始まりましたが、今回の交渉では、我が国の農業に与える影響が大きく、丹羽雄哉代議士も、先にオーストラリアを訪れ、各界の要人に、「センシティブな分野なので、じっくり時間をかけて話し合いを続けたい」と強く伝えてきました。
いずれにしても、日本の農業を取り巻く国内・国外の環境は、変化の速度を増してきています。このような流れに即応し、足腰の強い農業を育てていくことが、今、強く求められています。私たちは、一番の専門家である現場の皆さんの声に率直に耳を傾け、農家の方々とともに、夢と希望を持てる明日の農業≠フあり方を真摯に検討し、より良い農政の実現を目指す決意です。
国内農業の体質を強化するためには、まず食料供給コストを下げること、そして、担い手を育成することの二つが、もっとも重要です。その両輪を回す役割を担っているのが、JA(農業協同組合)です。そこで、まず第一弾として、茨城県南のJA関係者と意見を交換すると同時に、各JAの活動ぶりを紹介致します。
にわゆうやと明日の農業を考えるグループ
JAの挑戦 改革なくして農業の活性化なし
JA つくば市
米、芝のブランド化や農業の担い手育成で成果
つくば市の特性。それは、世界に誇る研究学園都市であると同時に、実り豊かな農村地帯でもあることだ。「JAつくば市」は、こうしたつくば市の特性を活かし、都市と農村の調和を目指した都市近郊型農業の育成に重点を置き、地産地消への取り組みや兼業化、高齢化に対応した対策を迅速に進めている。「JAつくば市」を訪れ、坂入豪代表理事理事長、久保田直好営農経済部部長に話を伺った。
「JAつくば市」は、激化する産地間競争に勝ち抜くため、販売事業においてコメや芝等の商品のブランド化戦略をとっている。特に、「JAつくば市」の「筑波北条米」は、日本テレビ『どっちの料理ショー』(1998年)やテレビ東京『テレビチャンピオン』(1999年)等で紹介され、オリジナルブランド米としての地位を確立しつつあり、ネット販売もスタートしている。
「亀田兄弟も、筑波北上米を食べていると聞きましたが。」
「はい、平成18年8月のボクシングWBAライトフライ級の試合に勝った亀田興穀選手に、筑波北条米をプレゼントしました。亀田兄弟は筑波山にキャンプをはったこともあり、筑波北条米は、エネルギーの源になったと思います。遠距離の方も購入していただけるよう、ネット販売も始めました」
「ネット販売は、働く女性にはとても有難いですね。『JAふれあい食材』も、いいと思います。まず、有害な添加物を除いた安心な食材が自宅までお届け頂けるということで、買物の負担が軽減できますし、家計費の節約にもなります。消費者とJAが、安心・安全な食を通してつながることができていいですね」
「そう、つながりといえば、農家と地域の皆様との新しい関係をつくりだすための貸農園『アグリコ桜』があります。生産者と消費者が、花と野菜づくりを通して農業を楽しむコミュニティづくりという点で、とても大切です」
「JAつくば市」のもうひとつの特徴は、営農事業にある。担い手育成は、全国的に厳しい状況だが、同JAの青年部は、現在百五十五人で活躍している。
「担い手育成は、日本全国の農協で、非常に重要な位置づけにありながら、成果を出すことが非常に難しい分野だと思います。JAつくば市が、担い手育成において、一定の水準に到達した理由は、なんでしょうか?」
「それは、担い手育成の専門部署を置いたことがよかったと考えています。JAの担当者は、幾度となく集落ごとの説明会や担い手となる生産者のもとへ出向き、情報提供あるいは詳細な説明をしたことが、成果を上げることのできた要因だと考えます。」
遊休農地対策等の課題を乗り越えつつある中で、「JAつくば市」は、都市と農村の調和を基調とした改革に、実績をあげているといえよう。
JA つくば市谷田部
JAはサービス業JA負担で「即決即断」の経営
「JAつくば市谷田部」は、“JAは完全なサービス業である”という使命のもと、組合員、地域の皆さんへのサービスを徹底させるために、攻めの経営戦略でしっかりとした成果をあげている。
成功に導く組織文化について、鈴木國勇代表理事組合長に伺ったところ、「組合員・地域の皆さんの想いにしっかり応えていくことを基本として、組合員・地域の皆さんに感謝し、生活の中での接点を大切にすることを日々心がけている」のだという。経営戦略の中心となるコンセプトは、「即決即断」である。営農関係で一例をあげれば、産直部会64人で11億7000万円もの売り上げがある。これは作付けするところから売るところまで、無条件でJAが代わりに実施するための「即決即断」の経営判断で実現したものだ。
例えば、設備投資や人件費があてはまる。生産者に強いニーズがある設備投資でも、生産者は、手間と金がかかり、かつ、リスクが高い事業については手を出すことができない。「即決即断」の経営とは、そういったコストを、農協で負担するというものだ。温湯消毒機の導入も「即決即断」の経営判断の成果だ。「JAつくば市谷田部」は、2006年に、農薬を可能な限り削減し、安全・安心なコメ生産の確立に向け、水稲種子の温湯消毒機を導入した。設備投資費を農協が負担するという経営判断から、生産者から利用料はとっていない。
このように組合員との信頼関係を担保とした事業推進を行ってきたことで、後継者不足に悩むこともなく、2004年には次世代の農業を担う若者でつくる「若葉会」が発足した。 現在30人で幅広く活動をしている。
「JAつくば市谷田部」では、生産者と消費者との交流事業が盛んだと聞き、営農センターを訪問し、高谷清センター長からお話を伺った。
「交流事業には、サツマイモ堀り体験や原木に生えているシイタケ採り体験といった『畑の学校』や、田植えや稲刈りを体験していただく『田んぼの学校』があります。生活協同組合の組合員さんに、食の安全・安心というものを、目で見て体で感じてもらいたいと思っています。この写真は、『収穫祭』のときのものです。『収穫祭』は、毎年11月に開催します。例年400人から500人の消費者の参加がありますよ。生産者と消費者が、楽しく顔が見える関係づくりをテーマに、交流事業を行っています。生産者と消費者が交流することで、お互いに“気づき”があり、回を重ねるごとに、食の安心と安全とは何かということについて理解が深まっていると感じます」
「交流事業に参加された消費者の皆さんは、家族単位での参加が多いようですが、家族で自然とふれあう体験を共有することは、とても素敵なことですね」
「はい、そうですね。特に、子ども達の表情は、いつも印象的です。例えば、子ども達は、シイタケが木に生えていることを知らなくて、本物のシイタケを見て、とてもびっくりします。稲刈りのときも、“稲の背丈がこんなに高くなってる! すごい!”という感じで、農作物の成長のスピードに驚きの声をあげています。こうした交流事業は、子ども達にとって、食と自然がつながっていることを感じる環境教育の体験学習としても役に立っていると感じます」
組合員、地域の方々がもつ信頼と、生産者と消費者との絆を強みに、地域社会における「JAつくば市谷田部」のブランド化は、着実に進んでいる。
JA やさと
モットーは、安全安心 美味しい「食」を消費者に!
「JAやさと」は、安全安心で美味しい「食」を消費者に届けることを第一に、多岐に亘る取り組みを進めている。田村和夫代表理事組合長と柴山進総務部部長からお話を伺った。
「JAやさと」の産直の歴史は長く、1976年のたまごの産直に始まる。その後、鶏肉(1982年)、野菜果物(1986年)、豚肉(1989年)の産直がスタートし、現在では、東都生協、パルシステム生協、神奈川県の十四取引所等に出荷している。現在のように、農協が産直に取り組んでいない時代に、産直を始めたのだ。「JAやさと」の強みは、「毎日食べるものだから、安心して消費者に食べていただく」ために、日々、追求していることである。
畜産有機物をリサイクル利用した土づくりを基本に、化学農薬の使用量を低減させた環境保全型農業を積極的に展開することで、環境にやさしい次世代型の農業のかたちとして、全国から着目されている。有機農業では、全国一クラスであり、キュウリ、ホウレンソウ等50数種類の野菜を作っている。生産者の技術水準は高く、現在では、20戸以上の生産者が、有機栽培基準(JAS認証)を取得している。また、鶏肉では、2003年に、「やさとしゃも」と「筑波地鶏」が、特定JAS(地鶏肉の日本農林規格)を取得している。鶏肉は、通常一週間前まで抗生物質を使うが、「JAやさと」では全期間抗生物質を使用しない。その他、箸で卵黄をつまむことができる卵や、子豚期以降は飼料に抗生物質を添加していないバークシャー血統50%の豚肉など、味の点でも消費者のニーズに応えている。
農業の後継者難が言われている中、「JAやさと」では、有機農業の担い手は、確実に定着しつつある。有機栽培部会を構成する26人のうち、3分の2は、新規就農者である。担い手育成につながっていく事業に、「ゆめファームやさと」がある。「ゆめファームやさと」事業は、都会と農村の交流拠点であり、本気で農業を目指す新規就農者を研修生として受け入れている。現在までに受け入れた研修生は、9家族となり、今年で第九期目を迎えた。研修は2年間で、修了後は有機農業のスペシャリストとして活躍している。
研修生の方に、お話を伺うと、第2期生のMさんからは、「有機農業でおいしい野菜をつくってみたいというのが、私が農業をやりたいと考えた理由でした。同僚や先輩から経済的に大変厳しいことは十分承知していましたが、妻と子ども達の理解があったから、農業を職業としてやっていくことができました」という返事が返ってきた。また、第3期生のAさんからは、「よく、農薬を使わない農業は大変でしょう、農業をやってみて、ご苦労があるでしょう、と聞かれますが、農薬を使ったことがないのでわかりませんし、農業が苦労とは思ったことはありません」という答えがあった。
お二人からは、ここで、夢に見た農業を実際にやっているという嬉しさが感じられた。農業収入で子ども達家族を経済的に養うまでには何年もかかる。栽培技術の習得、有機農業であるがための害虫や病気との闘いなど、課題や苦労もたくさんあるが、それ以上に、念願だった農業をいま仕事としていることに、充実感を見出しているのであろう。
また、「グリーンツーリズム」は、先駆的に取り組んでいる事業の一つだ。「ふれあい農場」として、年間3000人ほど、東京や千葉等の都会の親子や中学生達が農業体験をする。これは、農業とのふれあいを通じて、食と農業の大切さを共に考える機会となっている。参加した親子に感想を聞いた。
「日頃、土と触れ合うことがないので、田んぼに入って膝まで泥んこになれるような体験は、今まで味わったことがありません。開放感いっぱいで、癒されました!」とお母さん。「農業体験をして、本当に楽しかったです。すること全部が新しいことばかりで最初は不安だったけど、とても楽しかったです。カエルやミミズもたくさん見つけたし、あと、お友達もいっぱいできたし、また来てみたいです!」と、小学生の男の子。自然の中に飛び込み、融け込む体験と、ゆっくりとした時の流れの中で見つけた心の触れ合いが、グリーンツーリズムの魅力だと感じた。
2006年12月に「有機農業推進に関する法律」も成立し、今後、消費者の有機野菜に対する関心は、より一層高くなっていくであろう。今、日本の農業のかたちが問われる中で、国民にとってまず一番に大切なことは、食の安心安全であって、食品の価格ではないはずだ。有機農業は、手間とヒマをかけてこそ成り立つものである。農協改革とは、食の安心安全があってこその経営効率の追求であることを、「JAやさと」は、示している。
JA 茨城みなみ
人口衛星使って美味しい 米づくり目指す最新農法
「JA茨城みなみ」は、小貝川の流域に広がる県内で有数の穀倉地帯のJAである。「農のよろこびを伝えたい」「豊かな自然を残したい」「心豊かな社会を育みたい」を理念として、地域の人々が安心して暮らせる地域社会の実現を目指している。組織と経営基盤の強化に取り組み、着実に改革を進め、生産者とJAが一体となり、消費者から信頼される米づくりを実践していることが強みとなっている。
「JA茨城みなみ」は、米の産地間競争が激しさを増す中、科学技術を活用した農法で競争力の強化を図っている。その科学技術とは、フランスの人工衛星「スポット五号」によるものだ。米の食味は、たんぱく質の含有率によって影響を受け、米に含まれるたんぱく質の割合が高いほど食味が落ちると言われている。このたんぱく質の含有率は、人工衛星のリモートセンシングを使用して推定することが可能で、十メートル四方の単位で、水田の米のたんぱく質含有をマップ上に表すことができる。
その人工衛星リモートセンシング事業について、染谷一代表理事理事長、古谷清代表理事専務、谷口忠男営農経済部部長に、お話を伺った。
「たんぱく質の含有率は、どのように解析されるのですか?」
「解析には、8月から10月に人工衛星が撮影した水田の画像データを使います。その画像データから稲の葉色等を分析し、たんぱく質の含有率の推定値が出てくるというわけです。つまり、うまみ成分である玄米のたんばく含量を推定するということです」
「コメの食味の管理を、人工衛星を使って管理されているということですね」
「はい。たんぱく質含有率を一定水準以下にして、食味の改良と向上を進めることで、競争力を高め、ブランド化を進めることができます」
「だいたいどれぐらいの広さを管理されているのですか?」
「約6200ヘクタールです。十メートル四方の単位で、水田のコメのたんばく質含有率を推定することができます。ほら、これがマップですが、色で判別できるようになっています。マップを見れば、農家は自分の水田の色が簡単にわかります。品質に関する農家の意識は、確実に高くなったと思います。」
その他、「JA茨城みなみ」は、地域社会に対しても力強い組織として日々活動している。活動の一つである女性部会には、901人が所属(2005年1月31日現在)し、その活動は躍動的だ。「健康と福祉」を軸に、高齢化社会に向けた対応を強化した取り組みを進めている。現在、月1回、3会場でミニデイサービスを行ったり、助け合い組織「いなほ会」を設立したりする等、心豊かな地域づくりをめざして、会員同士の活発な交流の輪を広げている。
先が見える農政とは決していえない現状で、常に何が最善かを模索する姿勢を貫いている「JA茨城みなみ」。消費者に対して、地域社会に対して、いかに付加価値をつけていくか日々挑戦≠ナある。
JA ひたち野
レンコンのビニールハウス栽培先駆け等、新技術に挑む
茨城県の中央よりやや南部に位置し、「レンコン」「キュウリ」「小菊」「梨」などを特産品として生産する「JAひたち野」。霞ヶ浦に面していることもあって比較的温暖で、自然条件に恵まれた地域だ。
特に、レンコン栽培は歴史も古く、現在、玉川支店レンコン部員は65人、約5億円の売り上げがあり、東京・埼玉市場並びに生協への産直を中心に販売しており、高価格を獲得している。また玉川地区は、レンコン産地として20年前から他産地に先駆けてビニールハウスによる栽培を導入して周年栽培・周年出荷を実現。5月末から出荷できる体制を作って、10月まで発泡スチロール箱氷詰出荷により、市場から高い評価を受けている。
周年栽培・周年出荷が実現した背景には、素晴らしい技術開発力をもった生産部会の存在がある。私たちは、玉川支店を訪れ、JAひたち野山口和弘専務と塙玉川幹男支店長にお話を伺った。玉川支店の近くには、丹羽雄哉代議士の実家があり、丹羽代議士も戦争が始まる前から戦後しばらくの幼少時代、霞ヶ浦のほとりの母の実家に身を寄せていた。霞ヶ浦は、今も丹羽代議士が子どもだった頃と変わらず、静かで雄大な湖面にさざ波が広がっていた。
「ハウス栽培技術の開発は難しいと聞いていますが、『JAひたち野』では、どのように実現されたのですか?」
「三つのポイントがあると思います。一つは、レンコン専作農家が自発的かつ組織的に開発に取り組んだということ。次に、農家同士が優良な品種を求め日常的に導入や交換をしますが、こうした日常的な技術交流があることで、品質に差がないレンコンの出荷ができています。また、農家はその経営規模や、経営の特徴で、必要とする技術水準が違うので、それぞれの農家にあった技術の導入をすることが重要です」
「日常の生産活動と技術開発は、つながっているということですか?」
「そうですね。やはり、技術開発には、日常的な農家同士のつながりが基礎にあって、組織的に、農家が自主性をもって技術開発に取り組むことが大切ですね」
また、玉川支店キュウリ部会では、今では全国でも珍しい「ブルームキュウリ」を栽培している、皮が柔らかく歯切れのよさに特徴がある。関川支店・三村支店管内でもキュウリ生産者がおり、三支店合わせて2億5000万円の売り上げがある。細かな栽培管理を行っているので、安全、安心・新鮮さが、ここのキュウリの特徴である。病害虫防除は防除基準に基づいた農薬散布を行い、栽培者全員が農産物栽培生産履歴を記入し、適正防除に努めている。
「JAひたち野」は、二〇〇六年二月一日に茨城玉川農協と合併し、新生「JAひたち野」になった。安心・安全な地元農産物を特産品として持つ「JAひたち野」。自発性、組織性の高さに象徴される一戸一戸の農家のキャパシティと、農家間に横断的に形成されたネットワークが、「JAひたち野」の資源であろう。坂本馨代表理事組合長は、「地域に密着した組織づくりを目指し、都市と農村が調和する理想的な農協を目指したい」と抱負を語っていた。
JA茨城千代田
エコファーマー育成で環境保全型農業目指す
我が国の地域農業は、流動的で変化が激しい状況下にある。「JA茨城千代田」は、組織内外の情勢変化に対応しながら、組織再編に果敢に取り組んでいる。「地域農業の発展の中に、JA茨城千代田の発展の源泉がある」という方針のもと、組織競争力ある事業づくりと人づくりを、積極的に行っているのだ。農業の規制緩和時代に、市場で何を強みとして競争力をつけるかが問われる中、経営戦略の再構築が求められている。「JA茨城千代田」の販売・生産戦略は、量から質への転換を目指しており、新しい農業生産力の「かたち」を目指している。
新しい「かたち」と「成果」のひとつとして、「エコファーマー制度」を活用した環境にやさしい農業づくりがある。エコファーマーとは、持続性の高い農業生産方式の導入に関する法律に基づいて、土づくり、化学肥料、化学農薬の低減を一体的に行う生産方式を導入する計画を立て、都道府県知事の認定を受けた農業者のことだ。現在、茨城県には5579人(2006年9月現在)のエコファーマーがいる。
JA茨城千代田の特色は、「環境保全型農業の確立」と「量から質への転換」を組み合わせたマーケティング戦略に、この「エコファーマー制度」を活用していることだ。梨部会とハウス部会(ハウスキュウリ栽培)で成果を出している。梨部会では、環境にやさしい農業に取り組む農家を多く育成し、現在、部会には98人の会員がいる。堆肥散布機を導入し、良肥な堆肥による土づくりを推進する等、青年部を中心に試験区を設定し、減農薬に取り組んでいる。農産物の価格が低迷する中、部会員全員で、生産コストの低減等に努め、安心・安全な梨を生産している。ハウス部会は、発足が1967年であるが、当時は16人の部会員で、生産数量112.6トン、出荷金額1230万円だった。それが、現在は、部会員が7人であるものの、生産数量411.5トン、販売金額一億円へと成長している。栽培技術の向上を基礎に、「エコファーマーマーク」を活用したブランド化戦略を中心においたマーケティングを繰り広げたことが、成長の源泉となった。ハウス部会では、全員が「エコファーマー」として、認定されている。
今回、強力なリーダーシップを発揮されながら、果敢に組織再編に取り組んでおられる、矢口忠愛代表理事組合長にお話を伺った。
「農産物の価格は、天候に、著しく左右されます。天候によって、量も質も影響を受けます。ここは、“梨”“栗”“ぶどう”といった特産物があり、観光果樹事業も、かなり早くから始めていましたが、年々売り上げが減っているのが現実です。原因は、天候のリスク管理がなかなか容易でないことや、後継者不足ですね。梨を例にあげると、十年前の1996年度は、5億3300万円あったのが、2005年度は3億3400万円、2006年度は、2億8400万円と、年々売り上げが減っています」
「なるほど。かなりの減益ですね」
「あと、もうひとつ。輸入品の影響も大きいことは言うまでもありません。しかし、こうした国際環境に対応をし、足腰の強い農業をつくっていかなければ、地域農業は生き残れません。我が国の農業の国内市場のルールの見直しも含めて、これからは、規制緩和のあり方に問いかけていく必要があるかと思いますよ」
「地域農業の発展という切り口では、どのようなニーズがあるでしょうか?」
「やはり、生産者と消費者を第一に考えることではないでしょうか。生産者の営農と生活水準を上げること、また、消費者に安全・安心な農産物の生産をお約束することが大切です。生産履歴のシステムや、消費者がひと目見てわかる「エコファーマーマーク」等を活用しながら、農産物に関する情報を、透明性を確保しながら、お約束することが大切ではないでしょうか。直売所も、2か所つくりました。ひとつは、千代田ショッピングセンターの中にあります。生産者と消費者のつながりを密にしてこそ、地域農業の発展があるのではないでしょうか。」
「JA茨城千代田」は、後継者不足という大きな課題を抱えながらも、産地育成にむけた組織再編と経営戦略の再構築にむけて、新たに始動しつつある。
JA 土浦
スーパーに新鮮野菜の「うまかっぺ市場」開き、ネット販売も
「JA土浦」は、「農」と「共生」の社会づくりに向け、「生産と事業推進」と「経営の安定化」を進めている。そして、生産者と消費者のニーズに応えるべく「地産地消」「食の安全と安心」「資本の充実と経営の安定」に全力で取り組んでいる。
「JA土浦」では、農業生産法人『株式会社・JAアグリパワー土浦』を一昨年スタートさせるとともに、様々なマーケティング戦略を打ち出している。宮本幸男代表理事理事長に、お話を伺った。
「『JAアグリパワー土浦』は株式会社なんですね。「JA土浦」出資型の農業生産法人として出発したわけですが、具体的には、どのような事業を展開されているのでしょうか?」
「現在は、水稲の育苗や野菜の生産販売などを主に行っています。将来的には、農業機械を整備し、田植え・稲刈りの受託や遊休農地の管理などを手がける予定です。これから、農業の担い手として、農業法人が占める地位の重要性があがっていく中で、農協が農業生産法人といかにして相互にメリットのある関係を構築していくか、ということからも、農協と農業生産法人の連携のあり方は、今後の重要なテーマとなると思います」
「地域農業を支える新しいかたちということですね。『JA土浦』では、積極的な経営発展を打ち出していると聞いています。具体的な展開をお聞かせ頂けると有難いです」
「そうですね。『JA土浦』は、消費者のニーズに応えることを一番にして事業を進めています。インショップ事業は好評です。インショップ事業は、スーパーマーケット等の食品売り場の一角にコーナーを構え、『JA土浦』直送の新鮮野菜の販売を行います。茨城県内では、スーパー・カスミの土浦・つくば地域五店舗に茨城県特産コーナー『うまかっぺ市場』を開き、さらに都内・埼玉県内の潟Xーパー・バリュー等七店舗に、「JA土浦」管内で生産された新鮮野菜を毎日直送しています」
「ああ、インショップ事業は、とても評判がいいですね。今まで直売所に行かないと手に入らなかった野菜が、いつも行くスーパーでお手軽に買うことができるわけですから、消費者にとっても喜びですね」
「うまかっぺ市場」の新しい取り組みとして、ネット販売がある。五月末からスタートした。ネット販売が始まったことで、遠方の人でも、パソコン画面で、欲しい野菜をクリックすればJA土浦の特産品等を買うことができるようになった。
「他に、地域の皆さんからの評判が高い事業は、土浦市内のファミリーレストラン、ロイヤルホストとの取り組みでしょうか。サラダバーの野菜を、『JA土浦』で担当しているのですが、消費者の皆さんから“野菜の鮮度が違う”と嬉しい声を頂いています」
宮本代表理事理事長の声も弾む。めまぐるしく変化する農業情勢への柔軟な対応が期待される中、これからも、JA土浦の多角的な事業展開が期待される。
〔写真提供〕JAつくば市、JAつくば市谷田
JAやさと、JA茨城みなみ、JAひたち野、
JA茨城千代田、JA土浦、
座談会 茨城の農業をどう伸ばす
丹羽代議士 VS 「JA土浦」宮本幸男代表理事理事長
丹羽 ご承知のとおり、四月二十三日から日豪EPAの交渉が行われたこともあり、五月にオーストラリアに行ってきました。まず交渉相手の実情を把握する必要があると思い、色々離しを聞きましたが、一番驚いたのは、干ばつの被害状況です。農村では自殺者が出るほど、干ばつの問題は深刻で、家畜に餌をやることができずに、牛を百万頭殺したという話でした。
宮本 私も、オーストラリアの干ばつ被害は深刻だと聞いています。
丹羽 また、日本と同様に、後継者問題にも頭を悩ませています。耕作地は大きいけれども、若い人たちは町に出ていくため、後継者が不足しているということですね。農業の分野というのは、実は、先進国は、同じような悩みをもっているのですね。高齢化、担い手不足の問題は日本だけが抱えているわけではないということを改めて感じました。
宮本 なるほど。しかし、競争力という点から考えますと、我が国の農業が、国際化、自由化に耐え、オーストラリアの農業と競争する力をもっているかというと、そうではないことは明らかです。耕作地面積が圧倒的に違うわけですから、やはり、政府には、きちんとした対応をして頂かなければなりません。
丹羽 実は、今回、オーストラリアで要人に会う機会があり、EPA交渉にあたって、我が国の実情を率直に話してきました。日豪EPAは、非常にセンシティブな交渉です。私は、最低二年でも時間をかけて、少しずつ交渉を進める必要があることを感じたので、両国にとってセンシティブな交渉であること、そして、時間をかけて進めていくべき交渉であることを強く要請致しました。
宮本 私も、ヨーロッパ、米国、中国に視察に行きましたが、どこでも高齢化し、跡継ぎがいないという現状がありました。もう一方で、基本的な問題として、農産物の過剰生産があります。例えば、オーストラリアでも、主要品目は過剰生産です。だから、価格が安定していない。これからは、先ほど丹羽代議士が指摘されたように、日本の農業の特殊性を踏まえながら、いいところ、つまり、「強み」は何かを探し当てないといけないと考えます。確かに、グローバルな社会であることは間違いない。自由貿易でWTO・FTAといった国際ルールの枠内での競争原理下に農業があることはわかっています。我が国には、自給率の問題がありますから、国内の農産物を輸出するということではなく、まず日本の国民のために、安心・安全な農産物を届けたいという想いがあります。
丹羽 日本の農業は、例えば、東南アジアの農業と比べて、安心・安全が担保されていると思います。消費者の信頼があるということが、大変な強みになっているのではないでしょうか。農業は、今までのように稲作を中心とした農業だけではなくて、JA土浦のように、花もあれば、れんこんもある。野菜もあれば、コメもある、というように、総合的な意味で、安心・安全な食料を確保していくことが重要だと思います。私も、今回、JAの方たちからお話を聞く機会を頂いて、いろいろとご苦労されていることを改めて知りました。
宮本 安全で美味しいということは、絶対的な価値です。それに対して、コスト上の問題についてどのようにコンセンサスをとっていくか、ここに高いハードルがあります。つまり、消費者の方たちとのコンセンサスづくりに大きな課題があります。一般の消費者から、「農業は大事だね、大切だね」という声を頂きますが、グローバルな市場主義をコストに絡めていってこられますと、論点のすり替えが起こってしまいます。
丹羽 私が子どもの頃は、井戸水を飲んでいた時代です。ところが、今は、ペットボトルの時代。それと同じように、生活水準があがってくるにしたがって、食料品も安心なものを食べることができるようになれば、日本の農産物も見直されてくるようになると思います。生産者が、一工夫、二工夫、三工夫することで、付加価値があがってきます。日本の場合は、或る程度上質なものを中心につくっていかないと、耕地面積で絶対的な格差があるので、付加価値のあるものを作っていくことが、とても大切ではないでしょうか。先日も、東国原知事の人気もあって、宮崎県産のマンゴーが都市部で人気を集めて、一個二万円のものが出たと聞きましたが、いずれにせよ、これはブランド戦略が功を奏したケースですね。
宮本 ブランドという点でいえば、グレードの高いものが定着している現状があります。付加価値の高いものを売っていく時代ですね。
丹羽 六本木のルイビトンショップの前に、岩井地区の農家の人たちがきて、農産物を販売したところ、三十分も経たないうちに売り切れてしまったと聞きました。そういった今までに接点のない消費者と直結することができる販売戦略も、これからの必要ではないでしょうか。
宮本 消費者と直結することは、とても大切なことです。JA土浦も、直売所を四店舗や、インショップ『うまかっぺ市場』十二店舗等を出店し、消費者と生産者が、農産物を仲介して情報交換を行うことができます。
丹羽 最後に、JA土浦の戦略について、お伺いできればと思います。
宮本 ここは、混住地帯です。農村もあれば、消費者も住んでいます。こうした消費者と近い距離にあることを強みと考えて、農産物販売はもちろんのこと、農業という業態業種を一般の人に知って頂き、事業全体から得た収入を営農に再配分していくという資金フローをしっかりと作っていくことを重要視しています。
丹羽 JA土浦は、県南の農業の最大の拠点です。皆様には、これからも頑張って頂ければと思います。本日は、ありがとうございました。
参加者:JA土浦 宮本幸男 代表理事理事長
JA土浦 久保田敏夫 代表理事専務
JA土浦 広原孝 金融共済担当常務理事
JA土浦 熊木士郎 員外常勤監事
丹羽雄哉 代議士